“椋本 夏夜” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:椋本 夏夜 (34 件 / 4 ページ)

騎士は恋情の血を流す The Cavalier Bleeds For The Blood

 

人より少し落ち着いて居て、友人たちの中でも埋没している印象の青年・葛城貴士は、人の血流を自由に操る事が出来るという能力<プリーズ・ブリード・ユー>の使い手だった。その能力が故に他者を思うとおりに動かし、自分だけでなんでもすることが出来る貴士は様々な人間を利用し排除しながら、自らの目的を達成しようとするが……

個人的お気に入り度数

「しずるさんシリーズ」の前日譚にしてしずるさんとよーちゃんの出会いのお話、そしてしずるさんvs統和機構なお話。

両方の世界観を踏襲した物語でありながら「ブギーポップ」「しずるさん」どちらを読んだ事ない読者にも比較的優しいつくりになってるのがかなり良い感じ。ブギーポップシリーズからのキャラクターもかなり居ますが知らなければ逆に気にならない程度のレベルですし、「MPLS=なんか超能力っぽい能力持ってる人」程度の認識があればシリーズ未読者でも問題なく読めると思う。しずるさん側のシリーズはそもそもしずるさん&よーちゃんの出会い話なので、恐らくシリーズ知識が一切なくても大丈夫。両シリーズの入門編としても、結構いいんじゃないでしょうか。もちろん、どちらのシリーズもかじっておいた方が楽しめる事は楽しめますが。

最初3/4くらいはずっと<プリーズ・ブリード・ユー>の使い手であるMPLS・葛城貴士と、彼の周囲に現れた統和機構の組織<オカリナ>の対決が描かれ、これ、しずるさんじゃなくて「ブギーポップ」じゃん!!!とか思っていたのですがとある出来事をきっかけに、意外なところからスイッチを切り替えるような鮮やかさで「しずるさんシリーズ」の世界へと物語が転換していく様子が凄かった!煽り文句の通り確かにこの物語は「しずるさんvs統和機構」であり、しずるさんシリーズであり、同時に“ブギーポップ世界の外伝話”でもあるんだよね。

しずるさんの物語とブギーポップの世界観が融合してちゃんとどちらの美味しいとこも素材を殺さず活かしてる感覚がとにかく凄い。1冊でどちらの世界の物語もちゃんと楽しめてる。というか、物語が「しずるさん」の方面に一気に転換した際の衝撃は本当に凄かった。

上遠野作品は本当に久しぶりに読みましたが、やはり面白い!派生作品が追いきれなくて切っちゃった「ブギーポップシリーズ」やしずるさん世界とのリンクが多いらしい「ソウルドロップシリーズ」あたり、もう一度手を出してみようかなあ。というか「ブギーポップ」と「しずるさん」再読したくなってきました。

ブギーポップとしずるさん、どちらかがお気に入りなら必ず楽しめるはずの一冊。超オススメ!


アカイロ/ロマンス3 薄闇さやかに、箱庭の

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

ある日の学校帰りの公園で、景介は繁栄派の少女・檻江と出会う。敵であるはずの景介に敵意どころか何の感情も覗かせない彼女は、行方不明の景介の姉がいつも口にしていた詩を口ずさんでいた。姉の手がかりをつかむため檻江を追っていくと、病院にたどりついて…。
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なんかもう、このラノベ「今回のドッキリビックリ“つうれん”」を見るのが最大の目的になってきたような気がしてきた…そんなこんなで毎回つうれんがトバしすぎで困ります。このシリーズの真主役は間違いなく“つうれん”。次回あたりできっとまた打ちなおされて、突拍子も無い武器になってるに違いないと思います。もう枯葉お嬢様の発想力に完敗です。いやまあ、好きだけどチェーンソー+和服美人!!

今回は、繁栄派との戦いを通して鈴鹿の一族の隠蔽された暗部に迫るお話?2巻までは灰原と景介・枯葉の関係を中心に描いてきましたが、それがひと段落ついたからか二人の「姉」と「鈴鹿の一族」の方向にお話の中心が移ってきた感じ。景介の姉はとにかく、枯葉に姉が居たことなんて思いっきり忘れてた…。

景介が人間らしい小賢しさを駆使して戦う場面は面白かったけど、どうやって対抗するのかしょっぱなで判ってしまったのが残念だったかも。普通の高校生らしい発想で戦うというのがコンセプトならある程度予想されてしまうくらいで良いのでしょうが…どうせなら“つうれん”くらい度肝を抜く展開がほしかったかなぁ。

枯葉の知らない一族の裏事情もかなりあるようで、今後それがどのような形で明かされていくのか楽しみです。
というかつうれんの今後に超期待。


アカイロ/ロマンス2 少女の恋、少女の病

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

枯葉と出会ってから1週間後、彼女に誘われて「迷い家」へ再びやってきた景介はそこで型羽と名乗る一族の少女を紹介される。楽しいひと時を過ごした後、猜疑心の強い彼女に送られて自宅へと帰ろうとした矢先、繁栄派の少女達から襲撃を受けて…!?
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枯葉様かっこいいよ枯葉様っっ!!!
伝家の宝刀・「つうれん」を構える挿絵がオトコマエすぎて、心臓をばきゅんと撃ち抜かれた思いです。和服美人に日本刀という組み合わせは素晴らしい様式美だと思いますが、和服美人+チェーンソーという組み合わせのなんとも言えないアンバランスさにうっかり鼻血出そうです。素晴らしすぎる!!!

正直「つうれん」の超改造に度肝を抜かれてそれ以外の感想が色々と頭の中からぶっとんでいる状態なのですが、いなくなってしまった灰原吉乃を「もういない人」として忘れようとするのではなく、彼女を決して忘れず、彼女に恥じないように生きていこうとする二人の姿が印象的でした。「一生お前を(灰原と)比べ続けてやる」はまさに会心の一撃。決して身体能力的には強くない人間である景介だけど肝の据わり具合は一人前で、動けなくなってしまった枯葉を叱咤して立ち直らせる場面ではうっかりホレそうな勢いでした。

一方、彼らの知らない所で繁栄派は着々と動いている様子。行方のつかめない歩摘の行方や、ラストの依紗子と母親の意味ありげな会話も気になる。続巻が楽しみです。


アカイロ/ロマンス 少女の鞘、少女の刃

 

人間ではない『一族』がいた。ある山の奥深く、人の手の届かない場所で里を作り、ひっそりと暮らす―女しか生まれず、それ故に滅びかけていた『あやかし』。今までも、これからも、彼女たちは人の世から隠れ、人の世の狭間に生きていく、そのはずだった。しかし、その日。『一族』が起こしたある諍いは、小さな波紋となって町へと広がっていく。その結果として霧沢景介と灰原吉乃の前に現れたのは、枯葉と名乗る少女だった。彼女がふたりにもたらしたのは、運命か、或いは―。藤原祐×椋本夏夜のコンビが送る現代伝奇ファンタジー、ここに開幕。 (「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

姉が失踪してから8年…高校生となった霧沢景介は、中学時代に親友が失踪して以来塞ぎ込む少女・灰原吉乃に親近感を抱いていた。クラスの中でも孤立する彼女をなんとかしてやりたいと思った景介は友人達と遊びに出かける計画を立て、吉乃を誘うことにしたのだが……

「電撃の黒い太陽」が全開すぎる件について。
序盤読んでレジンキャストミルク的な「ほのぼの×ダーク」な学園異能再びかと思ったらむしろ「ルナティックムーン」もかくやな暗黒展開だったよ!!ごく普通の高校生達が日本の片田舎にひっそりと隠れ住んでいた「あやかし」の一族の諍いに巻き込まれてしまうという、和風伝奇ファンタジーです。

第一巻だというのに、カラーページで紹介されるメインキャラクターの半分近くが死んだり敵に回ったりするという状態で、まさに血みどろ青みどろ。そういえば藤原作品だと「レジンキャストミルク」は割合控えめだったけど、「ルナティックムーン」は結構盛大に人が死にまくったよなあ…と懐かしく思い出しました。まず初っ端で身も蓋もなくヒロインが死亡して、しかも結構グロテスクな展開が待ってたりするあたり、とってもとっても全開です。ていうか、もう1巻でいきなり日常殆ど崩落してるような気がするんだけど、今回は完全に「ほのぼの」分は無しなの…か…?

とにかく序盤で一族の本家跡取り娘である枯葉が“喪着”を執り行う場面が物凄い衝撃で。残酷で、恐ろしくグロテスクな場面の筈なのに、どこか凄絶な美しさがあるというか、なんというか。その他作品全体にも、醜いのに美しいというか、古き日本の様式美みたいなのが漂ってるといいますか…なんかそんな雰囲気がとてもツボでした。あぁ、語彙の無さが悔やまれる…。

キャラクター的には吉乃も枯葉も良いけど、やはりオトコマエな棗さんが良いです。殊子先輩といい、藤原作品のオトコマエ女子キャラはとてもツボだ…そして毎度の如く、ツンデレ全開な主人公がとても良いですね。枯葉の気高く美しく矜持も高く直球な物言いと、どこか世間知らずを漂わせる発言に翻弄されてツンツンしちゃう主人公にニヤニヤします。重苦しい雰囲気の本編の中、中盤移行は枯葉と景介のやりとりだけが唯一の息抜きポイントだったように思えます。

とにかく、「レジンキャストミルク」のダーク分や「ルナティックムーン」が好きだった人なら文句なしに楽しめるかと。かなり容赦ない展開が続くので、ほのぼの分お目当ての人にはちょい厳しいかも…?色々な意味で大変なところで次巻に続いちゃってるので、続きが楽しみでなりません。


パーフェクト・ブラッド 1 彼女が持ってるボクの心臓

[著]赤井 紅介 [絵]椋本 夏夜

両親が借金を背負って蒸発し、更に自らはトラブル巻き込まれ体質…という、とことんついてない少年・春川祐樹はその日、魔術を悪用した銀行強盗の人質になっていた。対魔法士犯罪機関の介入があり、漸く解放されたものの、目の前の見知らぬ少女を庇って瀕死の重症を負ってしまう。次に目を覚ますと、目の前にはどこかで見たような少女が居て…
   個人的お気に入り度数
銀行強盗の人質になった少年が致命傷を追って、その傷を治すためにメイドでツンデレで魔法士なクラスメイト・東雲透華の傍を離れられない身体になってしまい……というお話。キャラクターも非常に魅力的・物語も凄く好みで熱血展開もかな?り素敵だったんですが、なんか全体的に物語が駆け足というか…1巻つかって描写してもいいんじゃないかと思う部分がほんの100P程度で語られていたりするのでちょっと後半の熱血展開についていけなかった。新人さんで投稿作ならある程度仕方ないのかなぁ、と思ったら一応新人さんではないんですね。うーん…。

主人公がいきなり見ず知らずの少女を庇って…という行動からして、主人公の性格上、実際行動させるに足る心理描写がなかったように思えたのですが、更にその後「魔法士が嫌い」と公言している主人公が、助けてもらった当日だかその翌日くらいに至極あっさりその「魔法士」である透華という人間そのものに惹かれているみたいなことを言い出したのには興ざめ。とにかく「魔法士嫌い」という設定自体が余計なように思えてならなかった。せめて「魔法が怖い」くらいにしておいてくれればそこまでの違和感を感じなかったと思うのですが…。彼が実は魔法を使えるという設定も、もっと後半まで隠しておいても良かったんじゃないかと。

そんなこんなでキャラクター達(特に主人公)に感情移入できなかったのが致命的に痛かったのですが、キャラクターたちは本当に魅力的で、彼らの行動を見ているのは凄く楽しかった。特にメイドでツンデレで魔法使いなクラスメイト・透華が素敵過ぎ。祐樹に見せるツンデレっぷり、雪子に見せるお姉さんっぽい一面、「魔法士」として戦う“炎の魔女”としての不敵で凛々しい姿…変幻自在に変わっていく彼女の姿は本当に魅力的で、彼女に魅せられるようにどんどんページをめくってしまいました。また、二人のクラス担任で実は……な正体をお持ちの菫先生もとってもツボ。主人公である祐樹もちょっと「??」な部分はあったものの不幸症でヘタレで熱血一図で二重人格気味という設定はかなりツボなので、ストーリー的に微妙だった部分はキャラクターの魅力でかなりの部分を補ってしまえるくらいの魅力はあったかと思います。

個人的には、彼らの動く姿がもうちょっと読みたいというのもあるので、続刊が出たら買う予定。ただ、今回主人公の心の動きがあまりにも駆け足過ぎたのがどうしても気になるので、そのへんは何とかしてほしいかなあ…。


れじみる。Junk

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

あの戦いから数ヶ月が経ち、狭間学園に文化祭の季節がやってきた。硝子達はいつもの仲良し5人で文化祭を見て回るのだが、硝子は虚軸が消失して以来、すっかり引っ込み思案でおとなしい性格になってしまった舞鶴蜜の事が気になっていた。そんな中、佐伯ネアが硝子と蜜の二人を呼び出して…?
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絶望した!晶のメイドさん姿がミニキャラだけだった「れじみる。」に絶望した!!

あんまりにも悔しいから満点評価から☆1つ引いてやった!!やってやった!!だってだって、「TS喫茶」と聴いた瞬間から椋本さんの描く女装少年(?)が見られるー!と期待してたのに!2Pぶち抜きまでは出来なくても、1P全部メイド晶の挿絵で使うくらいしてくれてもいいと思う!!
……え?需要が無いですか、そうですか……

そんなわけで、一連の事件が終わったあとの文化祭中に「思い出話」という形で語られるほのぼの短編集。殊子にからかわれる晶のクラスメイトの話、里緒がナースの格好で皆の看病(?)をする話、温泉にやってきた殊子が女子風呂を覗こうとして姉妹バトルを繰り広げる話…と、振り返ってみると本編途中退場キャラの追悼スペシャルといえなくも無いような。殊子先輩はやはり良い姉キャラだ。

ほのぼの100%な本編の中、本編の結末を知っているからこそ時折やってくる寂しさというか切なさというかが秀逸。特に「ナンパ×休日×ショッピング」での芹菜のモノローグには不覚にも涙が滲んだ。戦いの果てに消えていった二人については言うまでも無く。とにかく随所随所で涙腺を刺激されます。

そして元の性格に戻ってしまった蜜が様々な過去を振り切って前に進みだす4話「ありがと、ばいばい。」はもう、冒頭の漫画から溢れそうになる涙を堪えるのに必死でした。あのメンバーの中では唯一の「大人」である佐伯ネアが子供達の為に最後の力を使って見せた奇跡と、それに応えようとする蜜の最後のセリフ。本編の余韻を残したまま、綺麗に後日談でちょっと心残りだった部分を片付けてくれたという感じで、本当に素敵でした。

そしてギャグ分100%のオマケ2編は色々な意味でどちらも最高だったのですけど、やはり電撃BUNKOYOMIに収録された「病棟」が最高。ギャグあり百合っぽい展開ありかつパロディ全開という、とんだはっちゃけっぷりを見せてくれました。

「……『キラの旅 ?the coordinated world?』?」
「うん、衝撃文庫でいまいちばん人気の作品なんだよー」
「こんな感じー。『できそこないの人間どもの乗るグフが溢れかえる宇宙を、一台のフリーダム(注・モビルスーツ。胸を貫かれてもパイロットが死なないものだけを指す)が、ゆっくりと飛んでいた。……』」

満員電車の中で思いっきり噴出した私に非はない……と思う。
「胸を貫かれてもパイロットが死なない」が色々と突き刺さった。なんていうか、これだけ色々な作品でネタにされる某ガンダムと某スーパーコーディの人は、実は結構偉大なんじゃないかとうっかり思ったり。


レジンキャストミルク8

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

大きすぎる犠牲を払って<無限回廊>の元から芹菜を救い出した晶達。一向に目を醒まさない彼女を救うため、晶は一つの選択を迫られる。一方、蜜と君子の前に現れた<無限回廊>は、彼らの次の標的が君子と芹菜であると語る。それぞれの想いを胸に、最終決戦が始まった—!
   個人的お気に入り度数

7巻の盛り上がりが素晴らしかった分、ラストバトルが少々尻すぼみに感じてしまったのですが、あらゆる所で「終わり」を感じさせる、綺麗な終わり方だったなあと思います。

様々な場面であざといまでに(笑)登場人物達が殊子を思い出すシーンが入って、ほのぼのパートでもしんみりモード。不意を付かれて悲しくなってしまうことも多々ありました。7巻での彼女の死によって生じた「欠落」が上手い事料理されていたと思います。

ラストでの戦闘がイマイチ盛り上がらなかったのはやはり<虚軸>以外の人物は、無限回廊さえ倒せば、<修正力>によって確実に復活可能であると予め判ってしまっているからでしょうかね。逆に、これを操られる存在が相手であるからこそ、戦闘がより絶望的になるという効果はあるので一長一短なのですが、やはりある程度「復活しないかもしれない」といった不確定要素が無いと、「死」による説得力が薄いのかも。それでもやはり、登場人物の死は哀しいものではあったのですが…。

より人間に近づいた硝子の葛藤が伝わってくるだけに、お互いがお互いの事を思って行動した結果が裏目に出てしまうのが切なかったです。というか、正直7巻の戦闘が盛り上がりすぎだったんだよ!!いろんな意味で。

ただ、里緒のラストの行動についてはちょっと作者の都合というか無理矢理と言うか、強引に泣かせに来た印象が拭えなかったです。元々<修正力>を安定させるための標的になっていたわけでもないので、イマイチ展開についていけなかった。確かに読み直してみると、今回も死亡フラグは立ちまくりだった訳ですが……。

最終決戦に向かう前の両陣営の前口上が好きでした。「終わりのクロニクル」といいこれといい、こういう前口上にはとことん弱い私です。

あ、ラストのみったん最高。


レジンキャストミルク7

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

全ての虚軸を消すため動き出した城島樹とその計画の柱となる城島鏡、そして“無限回廊”。彼らの元から森町芹菜を助け出すため、晶達も行動を開始した。危険は承知の上で無限回廊に晶と硝子が戦いを挑み、そしてその間手薄になった学校を殊子・蜜・ネア・里緒が守るという作戦を立てるのだが、学校には思いもよらぬ強敵が襲い掛かり…
   個人的お気に入り度数

なんだかんだいって前巻で捨て切れていなかった“日常”を完璧に捨て去った晶達の反撃戦。以前のように仲間達を利用し抜くという決意を固めつつも彼女達に置く全幅の信頼が凄く頼もしかったです。

そんなこんなでなんとか色々と吹っ切れた事も手伝って殆ど晶・硝子コンビが最強状態。今まで手も足も出す事が出来なかった“無限回廊”に遂に一矢報う事に成功。“無限回廊”と戦っているときの晶は本当に生き生きしていて、なんだか今回は本当に良かった。二人が皮肉交じりに口にする“兄弟喧嘩”という言葉にふさわしい戦いだったと思う。今までのこのシリーズには無いくらい、すがすがしいバトルでした。



でもその後が。
もう、何を言えばよいのか…。
確かに読み返すとこれでもかっていうくらい死亡フラグ立てまくり(ネタバレ)なんですけども…。
なんかどこかで、今回最後に至るであろう道が見えていながらも、暫く彼女の死を認めることが出来なかった蜜(ネタバレ)のように「それはないよね」って自分に言い聞かせ続けてきて、
それでもやはりそうなってしまった時には信じられなかった。
とにかく、どうしようもなく悲しかった。

終わったあとの蜜の行動とか、
硝子と姫のやりとりとか、
蜜と君子のやりとりとか
とにかく全部泣ける。
その後の城島一家の会話とか激しく頭に入らなかったくらい。

もともと凄く好きなキャラだったのですが、今回は本当に姉妹そろっておいしいところを持っていきすぎでした。巻頭の漫画から本編、エピローグに至るまで姉妹の絆がありありと描かれて、読み返すたびに泣けてくる。冒頭の平和なシーンですら、最後を読んだあとだと泣けてしまう。

展開は凄く悲しかったけど、本当にあらゆる意味で傑作級でした。あとがきで「今回は苦戦した」というような事が書いてあったけど、6巻までとはレベルがちがう面白さだと思う。なんていうか、各キャラの感情がこちらにストレートに伝わってきて、ひたすら泣かされました。

次回で遂にクライマックス。
どういう風に決着をつけてくれるのか本当に楽しみです。


レジンキャストミルク 6

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

漸く学校が始まった。今までと変わりない筈の日常…ただ、違うのは森町芹菜がおらず、晶が日常を捨て去ったという事実だけ。晶達は全てを知る為に、“無限回廊”の画策によりこの実軸に帰還した父親・城島樹の元へ赴くが、晶を待ち受けていたのは驚くべき真実だった…!
 

今まで保健室待機が中心で、すっかりコメディパート担当のイメージが強かったネア先生が今回は大活躍です。どうしよう、めちゃくちゃ惚れた。ネア先生といい殊子先輩といい、今回は年上組大活躍でいう事なしです。正直本編さておいてネアと殊子の二人分で五つ星つけちゃうくらいに良かった。

もうなんというかですね、表紙から凄いんですよ。ネア先生が表紙というだけでもかなりのインパクトですが、白衣+SM風ボンテージファッションって何。そんな姿で敵の前に立ちはだかるネア先生は非常に凛々しくて、普段とのさえないイメージとのギャップに萌えました。先生、一生憑いていきます。

前回での晶のかっこよさはどこへ行ってしまったのか、今回は晶が一気にヘタレ化してますね。後半で明かされる真実から考えれば、そのくらいヘタレてしまっても当然かもしれませんが…でも、里緒じゃないですが、他の虚軸をあごでつかって平然としてるくらいじゃないと晶じゃないです。

でも、晶にそれだけの変化をもたらした仲間という存在は、やはり大きかったんだなあと思うとちょっと嬉しい。ちょっと気配りする方向間違ってるけど、それが不器用な晶達が見せた仲間達への「気遣い」なんだと思うと凄く感慨深いです。

そしてそんな展開だからこそ、今回は「仲間」達の行動が凄く光ってました。カーテンフォールの恐ろしさを目の当たりにしても変わらず接してくれる仲間達が眩しい。特に里緒が単独で「無限回廊」に立ち向かう場面や、終盤で殊子が現れるシーンはめちゃくちゃかっこよかったです。特に後者は挿絵が神すぎる!!

そしてネア先生が目立った煽りを食らったのが蜜。すいません、可愛すぎます蜜たんが。すっかりネアに次ぐギャグキャラと化してしまったような気がします。そしてナチュラルに君子を愛しすぎな蜜が可愛い。そんなに心配なら素直に仲良くなっちゃえばいいのにこのぉ?!!(まあ、それが欠落の関係でしたくてもできない、というのがこの作品のダークな部分なのですが…)

今回は本当に色々な意味でダークな展開だけど、ちゃんと正統派な方向に話を進めてくれてるのが嬉しい。今後どうなってしまうのか、楽しみです。


しずるさんと無言の姫君たち

[著]上遠野 浩平 [絵]椋本 夏夜

冬の雪山で、到底その場にはそぐわないヒール姿の女性の死体がみつかった。死体は酷く綺麗な状態で欠損が無く、しかも苦しんだ跡が見えなかったため「白雪姫」等と渾名される。いつもの通り病院を訪れたよーちゃんが、その事件の話をしずるさんにしてみると…?
 

「白雪姫」「人魚姫」「眠り姫」「かぐや姫」と、おとぎ話のヒロインに見立てた死体達の事件をしずるさんが病室から解き明かすお話。タイミングよく直前に「断章のグリム」を読んでおり、ちょっとだけ「これ、なんて断章のグリム?」って思ったのは内緒ですが特に人魚姫の話等はそちらを読んでいたことも含めて感慨深く読むことができました。

いつもの通り、安楽椅子探偵役の少女・しずるさんとワトソン役のよーちゃんの会話を読んでいるだけでもなんだかほのぼのしてしまいますが、今回はよーちゃんがしずるさんに隠し事をして気まずくなったり…と少々暗め。しずるさんに隠された謎も少しずつ形を帯びてきた感じでやはり今後は彼女の正体についても明かされていくのでしょうか。

しかし、同時に1巻を読んだ際の自分の読後感想を読み直すと、しずるさんがよーちゃんと触れ合うことによって少しずつ前向きに変わっていっているような印象を受けました。少なくても1巻で感じたしずるさんへの「後ろ向きな人」という評価は訂正したい所。二人の温かい会話の雰囲気が非常に好きなので、是非ラストは二人とも幸せになって欲しいです。

そして本編と共に進んでいく「ハリネズミのチクタ」ですがラスト2編では二人が会話形式でお話を組み立てていく、という形式でなくなっているのが非常に印象的。特に最終章のチクタは明らかに第三章の視点から語られています。時計職人も見つかったことだし、本編もこれからクライマックスに突入、という事でしょうか。
二人の関係やしずるさんの秘密ともども、ハラハラしながら続編を楽しみにしたいと思います。




だから次は是非とももうちょっと早めに出してくださいねっ(ボソ)